サン・ミゲル・デ・アジェンデの魔法。

初のアメリカはニューヨーク、初のアジアはバンコクと順調に直球な場所を行き続けてきた。
しかし、初のメキシコはマヤのピラミッドでもカンクンでもない。
ツウな旅行者が絶賛する街サン・ミゲル・デ・アジェンデ。
アメリカの旅行誌「TRAVEL + LEISURE」の企画「The Top 15 Cities in the World」で二年連続1位を取るほどだが、名前を聞いてピンと来る人まだまだは少ない。(ちなみに2019年は2位で1位はベトナムのホイアン)

サン・ミゲル・デ・アジェンデは、同じく綺麗な街並みで人気のグアナフアトからバスで2時間ほどの場所にある。
スペイン植民地時代の美しいコロニアル建築が残り、2008年には世界遺産にも登録されている。
今まではメジャーな場所へ好んで行っていたが、そんなに”イケてるなら行ってみるか精神”で2018年の年越しの場所に選んだ。

この街の魅力は、ローカル色に尽きる。
今やどこに行ってもKFCやスタバがあるが、ここにはグローバルチェーン店は一軒もない。
下品な袖看板もなければ、豪華なヒルトンホテルもない。
昔から変わっていないであろう建物がカフェや銀行、コンビニなどになっており、一見してもわからないほど街に溶け込んでいる。
それもそのはず、1926年に国定コロニアル記念都市に制定されているため、勝手に建築も改築もできない。
そのため、時代を超えてその美しさが保たれている。
コロニアル都市で言えば、マレーシアのマラッカやベトナムのホーチミンなども行ったが、共存というよりは観光地として一部”残っている”という表現が近い。
それに比べるとこの街は立ち入った瞬間から魔法をかけられ、それは街を出るまで解けない。
さながらディズニーランドのような感覚に近い。

そして、何より治安が良い。
メキシコというと何かと治安が心配だったが、ここは今まで行ったどの街よりダントツで治安が良い。
台湾や香港(今はヤバイが)も何の心配もなく出歩けるが、ここはさらに良い。
夜でも女性や子供も楽しそうにフラフラしているし、客引きやぼったくりのような不愉快になることも何もない。

あえてデメリットと言うとすれば、わかりやすい観光地というものはパロキア教会くらいしかない。
それと、店が街に馴染みすぎているので、パッと見お店だか人家なのかわからないところくらいだ。

さて、訪れたのは年末ということもあり、夜中まで陽気な人で溢れかえり、いるだけでゴキゲンで楽しい。
各所で見かける露天のおじさんもほとんどが風船を売っており、怖そうな見た目とギャップに微笑む。
警察はなぜか馬に乗ってパトロール。


しかもワールズエンドのマウンテンハットのようなものを被っており、みなオシャレだ。
カメラを向ければ笑顔こそないが、ちゃんと止まってくれるのも嬉しい。
どこまでが年末営業だかはわからないが、抜かりないサービス精神を感じた。

この街のアイコンであるパロキア教会前の広場には特設ステージが組まれており、毎晩パーティー三昧。
他の街だと大体はバンドのライブとか、DJがアッパーEDMをかけているが、ここはダンスパーティーと表現するのが一番近い。
BGMに合わせて舞台上の人が歌ったり、お客さんを煽ったりする。
男女ペアでチークダンスのようなパートもあれば、皆が同じ振り付けで踊っているパートもあるので、日本で言えば盆踊りのような感覚だろうか。
途中、酔っ払いのおじさんが舞台に乱入して一緒に歌い始めたが、それもありらしい。

メキシコと言えばタコス。
屋台のタコス屋は常に超満員。
仕切る人もいないので、強引にカウンターに割って入っていかないといつまで経っても食べられない。
そして、カウンターに着いてからも大変で身振り手振りで店員に「次は俺だ!」とアピールする必要がある。
まるで親鳥の餌をもらう雛鳥のようだが、アピールが強いと早めに作ってくれるシステムで面白い。
さすがにシラフだと戸惑うが、メキシコの絶品テキーラを飲めば、そのテンションにも付いていけるようになるので不思議だ。

カウントダウンはダンスパーティーが開催されていたパロキア教会前の広場へ向かった。
30分前に着いたが、どこにこんな人がいたんだと言わんばかりの混雑っぷり。
入るのもやっとでギリギリ端の方を陣取った。
日本でも年越しのために神社に人が集まるが、その辺りは万国共通のようだ。
人が多すぎてカウントダウンの指揮を取る人がいたのかもわからなかったが、どこからともなくカウントダウンが始まり、歓声と共に花火が上がった。
その打ち上げ花火自体も広場内でバンバン打ち上げており、かなりデンジャーである。
しかも、打ち上げ花火の中でドローンを発見。

確かに僕以外でもドローンを堂々と持ってウロウロしている人を見かけたが、この数千人の頭上で花火の間をぬって飛ばすとはなかなかハードコアである。
僕はモラルと常識を持ち合わせてしまっているので、とてもその発想はないが、できるならやってみたいのが本音。
さぞかしいい映像が撮れただろうと思うと嫉妬する。

年越しまでにテキーラをたらふく飲みすぎたので、早めにホテルに戻り初日の出フライトに備えた。

次の日、日の出前に起床して街が全貌できる高台へ向かった。
ロン島同様、こんな朝から太陽を拝みに来ている人は皆無。
展望台には昨晩さぞかし盛り上がったのであろうゴミが散乱していた。
あいにく初日の出は逆だったが、ドローンの画面越しではあるが、メキシコの力強い太陽が拝めた。

ホテルへ戻る道沿いのお店では、まだ飲んで盛り上がっている人もチラホラ。
目が合ったら「お前も飲め」とテキーラボトルを持って出てきたが、貴重な1日が無駄になりそうだったので、笑ってかわした。

昨日の広場に行くとチラホラ人はいたが、すでにステージの撤収作業が行われていた。
三が日くらいは残して毎晩パーティーをやってほしいものだが、その辺はあっさりしている。

街も年末の数日とは打って変わって普通の日になっているような気がした。
新年を静かに過ごすのはメキシコも同じなようだ。

帰りのフライトは早朝だったため、深夜にホテルでチャーターしてもらったタクシーで空港に向かった。
行きのバスから見たサボテンが生い茂った荒野も真夜中ともなれば、恐怖。
あの街の魔法はとうに溶けてるため、メキシコの現実を思い出し「いつカージャックに遭うか」ビクビクしながら不安な2時間を過ごした。
何事もなく無事に着いたので、追加でチップを渡そうとしたが、「もう代金はもらってるよ」と断られた。
そんな謙虚な人柄もこの街の良さである。

 

 

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