乗車拒否からのPCR検査 – ポルト編 –

次の目的地マドリードへ向かうためにポルト空港へ。
マドリードまではスペインのLCCのエアヨーロッパを予約していた。

チェックインカウンターに行くとPCR検査の陰性証明書を求められた。
EU内は一回入ってしまえば国内便感覚で利用できるが、これは予想外。
聞き間違いだと信じて、知らん顔でスペイン入国に必要な健康状態を報告するオンラインアンケートの結果を提出した。

「これじゃない」

どうやら本当にPCR検査結果がないと乗せてもらえないらしい。これは困った。
とりあえず別カウンターへ案内されたので列を外れ向かった。
ここでPCR検査を受けられると思っていたが、渡されたのは一枚のメモ用紙。

UNI LABSとは病院の名前で、ここでPCR検査を実施しているから受けてこいということらしい。

\(^o^)/

途方に暮れた。
航空券はLCCだったので捨てても良いとして、すでにマドリードから日本への帰国便を買い直しており、これに乗らないと水際対策によりしばらく日本に帰れなくなるかもしれない。

こんなトラブルの時は色々と考える。
楽観的なことも絶望的なことも。
今後はどうなるか予想していた。

A.海外特有のユルさで間に合わないならそのまま行けと乗せてもらう
B.自力でPCR検査結果を取って、再度予約してマドリードに行く
C.病院の予約が取れずに所持金が尽きるまで路頭に迷う
D.自力でPCR検査を受けるも陽性で、日本に帰れなくなり、バカな迷惑日本人として報道される

わずかな希望でAがあると期待してたが、あえなく離陸時間を迎えた。
ちょっと昔なら「飛行機出発しちゃうからマドリードでちゃんとPCR検査受けてね!」というユルさもあったと思うが、コロナを前に世界は変わったようだ。

次に狙うのはもちろんB。
教えてもらったUNI LABSとやらをマップで検索すると、空港からは80kmほどの距離。

E.イチかバチかこのままタクシーで病院に向かう
F.アポなしの飛び込みで受けられる可能性は低いので、一旦街に戻りホテルを確保する

PCR検査を受けるとすると早くても数日は要すると思い、Fがベターと判断してタクシーに乗り込んだ。
おしゃべり好きの運転手だったので、PCR検査について聞いてみると色々と教えてくれた。
彼によるとUNI LABSはそこら中にたくさんあり、一部の医院でPCR検査を実施しているとのこと。
これを聞いて少し安心した。
ただ、行く前に電話で予約したほうが良いと勧められた。

それが簡単にできれば苦労はしない。
乗車前に空港で近隣の病院を片っ端から調べたが、ホームページはポルトガル語で書かれており、理解不能。
電話で話してもアポを取るどころか、意味不明でガチャ切りされるのは目に見えている。
なので、どうにか直接行って交渉するしかないと思っていた。

さて、前回苦労したホテル探しだが、OTAは信用できないので自分の足で探すことにした。
滞在中に営業しているホテルの写真を何気なく撮っていたのが、こんなところで活きてくるとは思ってもみなかった。

写真の位置情報からそのホテルへ向かうと無事営業中!
早速、中に入って交渉開始。
ここ10年はOTAでしかホテルを予約していないので、なんだか新鮮な気分になった。

「今日泊まりたいのですが空いてますか?」
「予約は?」
「ないです」
「何泊?」
「うーん、2泊から1週間以内だと思う・・」
「え?」

ここで事情を説明した。
クリロナ似の受付のお兄さんはとても良い人で、毎朝その日泊まるか泊まらないか言ってもらえればいつまでもいていいよ、と融通を利かせてくれた。
さらに、病院の電話アポ入れが不安だったので、僕の代わりに電話して欲しいとお願いすると快諾してくれた。
日頃の行いが良いせいか、嬉しいことに事が進む。

飛行機は朝の便だったので、今はまだ正午。
ホテルのチェックインまで2時間ほどあったので、ランチを食べに出た。
メシを食いながらスマホでUNI LABSの位置を検索。
おしゃべりな運ちゃんの言う通り、すぐ近所にも一軒ヒットした。

早々に食事を済ませ、UNI LABSへ行ってみた。
しっかりとした病院を想像していたが、街の耳鼻科ほどの規模。
受付で事情を説明してPCR検査について聞いてみた。
どうやらここでは実施しておらず、近所の別の医院で受けられると教えてくれた。
その距離わずか30m。そのままその医院へ。

まるでスナックの雑居ビルのようだが、ここらしい。
とてもPCR検査を実施しているとは思えない門構えだ。
ビルに入ってみると受付に恰幅のいい男性がふんぞりかえっていた。

「どこに行くんだ」
「SYNLAB(病院名)です」
「そこ15時からだぞ」

ということで先にホテルにチェックインして出直すことにした。

二度目の受付は顔パス。何も言わずにボールペンで上を指した。
手動扉のクラシックなエレベーターに戸惑いつつも、目的のフロアに到着。

PCR検査待ちの人が列をなしているかと思っていたが、閑散としており人の気配がない。
看板に従い病院に入っても誰もいない。
声をかけるとタイベックを着た女性が奥から出てきた。

事情を説明。
すると彼女は無言で出ていってしまった。
何かマズいことになったのかと思っていたが、パイポを咥えた気品溢れる教授のような老人と戻ってきた。

どうやら受付の方は英語が話せないようで、通訳代わりに教授を連れてきたらしい。
再度教授に事情を説明。
それを聞いて教授は受付の女性にポルトガル語で説明。
その回答を僕に英語で説明。

要約すれば、ここでPCR検査は受けられる。
金額は現金で101ユーロ。
受けるのにはパスポート番号の提示が必要。
検査結果は48時間以内にメールで送るとのことらしい。

ただ、48時間後に結果を待ってからマドリードに向かうと羽田行きの飛行機に間に合わない。
どうにか早く結果が欲しいとお願いしたら、できるだけ早めに送ると言ってくれた。

この国のPCR検査事情は全くわからないが、英語を話す患者が来ることを想定していないところを見ると市民向けの医院なんだと思う。
または研究施設でPCR検査はオマケなのか、どちらかだ。
また、ヨーロッパでは現金をあまり使うことはないが支払いが現金のみというのも少し不思議だった。

諸々の手続きを済ませ、いざ検査。
奥の部屋に連れてかれ、口開けてズブ、鼻の奥にズブっと細長い棒を刺して終了。わずか二分くらいだった。
PCR検査処女をまさかポルトで失うとは思ってもいなかったが、意外と簡単ということがわかった。

そのまま診察室でバイバイと言われ退室。
キャバクラのようなお見送りはもちろんない。

レイオド、レイオド、レイッホー!

なんとかここまでたどり着いた。
不安と緊張から解放され、いっそのこと踊りたい気分である。
あとは結果を待つのみ。
夕食はピザを二人前食べ爆睡した。

朝起きるとすでに検査結果がメールで来ていた。
結果はもちろん陰性。
大丈夫だと思っていても、こうやってちゃんと陰性とわかれば安堵感は段違い。
明日の便で帰るとホテルの兄さんに報告して、証明書を印刷してもらった。

次の日。今日は大晦日。
数日前はポルトを発つため病院探しに奮闘していたが、いざ発つとなると寂しいものだ。
旅の厳しさも優しさも教えてくれたポルトの街に別れを告げ、空港へ向かった。
同じエアヨーロッパのチェックインの列では、PCR検査結果を持っていないためか、列から外れていく人を何人か見かけた。

自分の番になると案の定PCR検査結果を求められた。

ハイハイ、来ましたか!
と見せびらかしたかったが、冷静にこれのこと?くらいにクールを装った。

やっと発券してもらいポルトのミッションは全て完了。
鼻歌を歌いながら飛行機に乗り込んだ。

マドリード編へ続く。

 

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