去年末に訪れたチェコの首都プラハ。
ある程度の寒さは覚悟していたが、実際に行ってみると本当に寒い。
気温は毎日0度前後。
日によっては雪もパラついていた。
何よりここの冬は日照時間が短い。
日の出は8時、日の入りは16時とまるで銀行の営業時間。
ただ、寒すぎて早朝にウロついている人もいないので、その辺はこの時期に来てよかった。
さて、プラハの世界遺産は町全体となんともロマンティック。
まるで中世ヨーロッパにタイムスリップしたような感覚を味わえる。
アイコンにもなっている赤い屋根の家たちは、おもちゃの国から飛び出てきたような世界が広がる。
どこを切り取っても画になるとは、まさにこの街にふさわしい。
ただ、映像を撮るとなると苦戦する。
ここまで綺麗な景観だと、逆に少しの粗が気になってくる。
スマホのカメラを構えている人、
「I LOVE PRAGUE」のTシャツを売っている土産物屋、
スターバックスの看板、
見慣れた日本車、
派手な色のダウンジャケットを着る人などなど、
中世の街並みにそぐわないものが浮き彫りになってくる。
「撮る場所に困らなそうだからプラハ!」と安易に来たが、逆に仇となった。
まるで「営業中のディズニーランドでいい映像撮ってこい」というような無理難題を投げられた気がした。
プラハ城やカレル橋など有名な観光地はもちろん素晴らしいが、僕のお気に入りはジョンレノンウォール。
最初はジョンレノンがサインでも残したファンの聖地なのかと思っていたが、実は奥が深い。
遡ること80年代のチェコスロバキア時代。
弾圧された共産主義への不満からレジスタンスが自分たちの想いをこの壁に描くことで、民衆を奮い立たせ自由化運動へと導いていった、らしい。
そして今も自由の象徴として残されており、日々誰かの手によって上書きを繰り返し、時代とともに変化している。
「世界のトレンドをアート化した匿名掲示板」というべき場所。
実際この文化は自由を求める運動として、世界中に広まっている。
近年では香港の抵抗運動でも存在していた。
自由を求める無数のメッセージで埋め尽くされた壁は同じく「レノンウォール」と呼ばれていた。
たかが壁、されど壁。
時として、ベルリンのように国を分断することもあれば、プラハや香港のように団結するための壁もある。
さすがに滞在した5日間では大きくは変わらなかったが、今も誰かの想いによって生き続けていることと思う。